南米ウルグアイの元大統領のホセ・ムヒカ氏が先日、亡くなりました。かつて、日本のテレビ局がインタビューをしたり、日本に招いて、講演会をしたりしたことで、日本でも有名になっていました。
特に、大統領時代でも、大統領報酬の大部分を寄付し、さらに大統領官邸にも住まず、首都モンテビデオ郊外の農園にある自宅で質素な暮らしをしていたことで、「世界一貧しい大統領」として有名でありました。
また、彼の言動を聞いていますと、私の考える理想のリーダーに備えて欲しい考え方がいろいろと見受けられます。
ひとつは、彼は貧しいと言うことは、物質的な事ではなく、精神的な問題であると認識しています。お金や物をどれだけでも欲しいと考えている人間こそ貧しいのだと。お金や物を求めることより、自分の幸せを求めることが大切であり、幸せとは、自分が打ち込めるもの、絵を描くことでも、音楽を奏でることでも、何でもいいから、それを追い求めることが大切であると、述べています。
今の世界のリーダー達は物質的なことを求めている人がほとんどであり、豪華な家に住み、特別に豪勢な暮らしをしているのです。それに対し、ムヒカ氏はリーダーたるもの、国民の生活と同じレベルで暮らし、国民が豊かになって初めて、自分自身も豊かな生活を享受すればいいと思っておられるのでした。
物質的な富を求めるから、争いが生じる、逆に、自分の道を見つけ、そこを歩んでいけば、一番の幸福感が得られることを彼は知っていたのです。付け加えるに、本当の幸福をみんなが求めるようになれば、富はそんなに多くは必要で無くなり、一部の人間達で、富を独占することもなくなり、多くの人達に富が行き渡るであろうことも、私が常に述べていたことと同じ考えだと思います。
こういうような稀有な考え方を持っている大統領、一国の指導者がさらに出て来ることを願いたいです。そのことで、どれだけ多くの人間が幸せを求めることが出来るようになることを世界の政治家や指導的立場にある人間達に理解して欲しいと思います。
そういう意味で、日本の農水大臣が米の高騰、不足が国民生活に重く圧し掛かっている今日に、「自分は米を買ったことが無い、支援者から頂いており、売るほどある。」と言う発言をしましたが、この大臣はムヒカ氏と比べ、人の上に立つリーダーの器ではないことがはっきりしたと思います。本人はウケを狙ったと釈明していました。後になって、国民や政界の厳しい反応を見て、発言を撤回しましたが、このようなことを言う事自体、国民の窮状を少しも理解していないことが露呈したのだと思います。自分は特別な立場で別格であると認識しているのでしょう。
日本の政治家で、自分の生活より国民の生活を重要視する人間はどれだけいるのでしょうか。彼らは、多くの報酬と使い道を明らかにする必要がなく自由に使える手当を多く持っているのに、誰一人として、それを貧困で困っている国民に使って欲しいと差し出す者はいません。
だから、彼らが、どれだけ国民の暮らしの為に、減税や給付をすべきと言っても、まともに信用できないのです。ムヒカ氏のように、まず自分が痛みを受けることから始めるのが、本当に国民のことを考えている政治家であると思います。