新たに任命された小泉農水大臣が備蓄米を5kg約2000円で、6月初旬に店頭に並べると公言しています。今回は入札ではなく、随意契約で、安い価格で、一定の基準を満たした業者に引き渡すようです。

 スピード感を持って安い米が国民のもとに渡るということは悪いことではありませんので、小泉大臣の評価が上がるかもしれません。米の高価格で苦労していた庶民には救世主と見られるかもしれません。また、参議院議員選挙に向けて、自民党は好感触を持ったかもしれません。まさしく、選挙の為と考えれば、このやり方は成功したと言えるかもしれません。しかし、このことでこれまでの米問題を帳消しには出来ないと思います。

 一時的に米の不足感、高値感が緩和されるでしょうが、それで万事上手く行ったと言えるかと言えば決してそうではありません。今後、米国との関税交渉で、米国米の追加輸入が決まるかもしれません。今年もしばらくすれば新米が出荷を始めます。特に今年は米不足に対応し、作付面積を増やしているところが多いので、米がダブつく可能性もあります。そして、元々の問題として、今年どうして米が不足し高値になったのかと言う原因が明らかになっていません。そこを明らかにして対応策を施さなければなりません、備蓄米はあくまで一時凌ぎでしかないのです。さらに、次代の米生産を担う若者をどのように確保するのか、国際競争力をどのように担保するのかと言った重要な問題も手付かずのままです。

 残念ながら、日本の政治では起こった問題に対し、このような目先の対応で終始することが多いのです。それで、社会の問題が根本的には解決せずに、蓄積して行き、今のような住み難い社会が出来上がってしまったと思います。これこそ、今の政治家や官僚が事勿れ主義であることの証であります。彼らは、目先で心地良いようなことを国民に示し、実は、自分達の地位や権限、富を守る事を第一にしているのが本音なのです。

 だからこそ、今の国民の窮状に際しても、自分達の持っている権益をどうしても守り続けることに固執するのです。

 このような事勿れ主義によって、重要な問題は本質的な解決を見ないで未だに我々国民の上に重く圧し掛かっています。エネルギー問題、食料問題、地球温暖化問題、原子力管理問題、年金問題、夫婦別姓問題、皇位継承問題、憲法改正問題などと、数え上げればキリがありません。

 この事勿れ主義の根底には、前述しましたような自分本位の姿勢だけではなく、政治家や官僚の能力不足もあります。難しい問題を抜本的に解決するには、卓越した知恵と何に対してもくじけない行動力が必要ですが、残念ながらそのような能力がかなり不足しているように思えます。

 今の政治家達はそれぞれが自分の意見は述べますが、ほとんど言いっ放しで、それぞれの意見をベースに議論し、より建設的なアイディアを生み出すということが全く出来ていません。ひとを批判したりすることに終始して、国民の為に最善の策を作り出すという姿勢が全く見られないのです。もしかしたら、そのような力を保有していない人間達の集団なのかもしれません。これこそ、日本の政治は二流と言われる所以なのです。

 だからこそ、選挙システムの大変革を図り、自分の利益の為に政治家を目指すような人を排除し、国民の生活を優先して守ろうとし、かつ能力のある人間が出馬し、当選するようにしなければならないのです。