今、日本の医療が崩壊しつつあります。以前、医師不足が問題となって、医師を増やすべき対策がとられました。それにより、医師の総数は数万人増加しました。にも関わらず、未だに医師不足で、かつてのようなサービスが出来ない病院が増えているようです。医師が増えたのは、東京、大阪、名古屋などの都市部周辺に限られていて、地方では医師不足が深刻な状態が続いているようなのです。以前は、大学を卒業した段階では、大学の系列病院、特に地方の公立病院にも研修で暫く奉公する制度がありましたが、その制限が取っ払われて、都市の私立総合病院へと進む医師の卵が増え、その反動で、地方の中核となる公立総合病院の医師不足が加速するに至りました。

 地方都市の地区中核病院での医師不足により、幅広い診療科を維持出来なくなったり、地区での救急医療の対応も難しくなると言った問題が出ています。また、慢性的な過重労働により、医師達の疲弊、医療ミスの増加につながるなど、市民も安心して受診出来ないような事態が生まれているのです。

 さらに、都市部も含め、赤字に転落する病院が多数出て来ていまして、その対策として、利益の上がる患者を優先して、入院させたり、手術させたりするようなことが現実となっています。少しでも利益をあげられる患者を獲得する為に救急患者をキャパ以上に受け入れたりして、そのことがまた医師の過重労働につながると言う悪循環が進んでいるのです。

 私は何でもかんでも、市場原理に委ねて、利益追求させるのは違うと思います。医療、福祉、教育のような公共性の高い分野では、国、自治体の支援により、利益追求では無く、患者や生徒のことを優先する本来の目的に合致するような仕事の仕方を守らなければならないと思っています。

 確かに、昭和中期までのように、多くの事業が、政府、自治体の管理のもとに統制されて来たというのは自由経済発展を阻害する原因だったと思いますので、多くの分野で民営化、自由化が必要であると思いましたが、国民の利益を守る為に、国の管理や税金での支援が必要な前述したような公共性の高い分野はある程度、公的に管理しなければならないと思います。例えば、大学が利益を追求すると、目先の利益をあげやすいような企業の研究開発と重なるような分野を狙うことにより、本来、民間の企業では狙い難い、長期的、基礎的な研究が疎かになり、ノーベル賞級の研究や、学問の根底を覆すような研究は生まれ難くなってしまうと思います。

 健康保険のような社会保険が逼迫するのは問題ですが、だからと言って、病院に利益を追求させたり、医療従事者の報酬を下げたりしては、さらに医療の質が低下することになってしまうと思います。同様に、保育士や介護士の報酬や、サービスへの支援を減少させたりすることは、保育、介護の質を低下することに直結すると思います。

 それらのような国民の命、生活を守ることは、政府、自治体の一番重要な役目であるので、この部分を充実することは避けられないと思います。消費税の導入や税率アップは、その為の財源として実行したと思いますが、実態はそうなっていない、逆に福祉などの質が低下してしまっているのはどういうことでしょぅか。

 私は国民全体から広く徴収し、貧困層への負担が大きい、消費税には否定的です。大企業、富裕層からの所得税などの税率を上げて、財源にすべきと思っています。その税金を医療、福祉、教育の支援に回すべきと思います。少なくともこれらの分野での利益追求の方針は撤廃すべきです。病院、保育所、介護施設、学校などは本来の目的に集中出来るような環境にすべきなのです。

 そう言いますと、その分野では、安易に税金を消費するような親方日の丸気質がはびこってしまうから、自由競争が必要だと反論する人もいるかもしれません。確かに、きちんとコントロールしなければ、そのようになってしまうと思いますが、それは管理方法が悪いからなのです。多くの税金が投入されるのですから、管理指標が必要です。それをお金と言う分かり易い指標ではなく、得られた成果で判断するのです。例えば、病院であれば、治癒率、医療ミスの少なさなどを判断材料にするのです。お金で判断するのに比べ、難しい判断となりますが、そこはきちんとした知恵を働かせれば可能だと思います。要は、お役人仕事、やっつけ仕事では無く、役人の中にもプロとしての仕事が出来る人材を配置するのが重要であると思います。

投稿者

弱虫語り部

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