テレビのドキュメント番組で、定住する家も持たず、毎日、日本中、たまに台湾など外国の街頭に立って、今夜泊めてくださいと言うようなプラカードを掲げ、泊めてくれる人を探し、そのような善意の他人の家を渡り歩いて生きている若者の記録が放送されました。

 彼のこのような生き方は、以前、海外を放浪したときの経験から生まれたようです。街角で、彼のことに関心を持った人は、最初は怪しんだりしていますが、彼との会話で、彼の人間性に惹かれ、彼を家に連れて帰るようです。このような生活をもう何年間も続けていて、SNSに投稿したり、今回のようにテレビで取り上げられて、知名度も上がり、彼を泊める人の警戒心も下がって行っているようです。そのような善意の人からも、社会には悪い人間もいるから気を付けてと諭す人もいますが、彼は、あまり心配していない様子です。

 彼が語るのは、自分には欲は無い、たったひとつの欲とは、このような生活をずっと死ぬまで続けて行きたいということだそうです。私が思うに、彼はいろいろな人との関わりを通じて、それらの人々の人生、経験、考え方に触れることに非常に興味があり、そのことに喜びを感じているように思います。そして、人間というものを信じ、人間の善意を信じているのだと思います。だから、見ず知らずの家に連れて行かれても、そんなに心配もしないのでしょう。

 私は「知らない人はすべて悪い人だと思え」という教えを守って生きて来ています。それで、社会の悪に飲み込まれなかったのだと思っています。しかし、彼のような人間には、悪が近づいて来ないのではとも思ってしまいます。

 彼の会話を聞いていますと、相手の話すことをよく聞き、その内容をはっきり否定するようなことは決してしません。自分の生き方について信念を持っているのですが、他人の生き方も尊重する姿勢を強く感じます。このような性格の彼には、これまでの生活の中で、多くの親しい人達が出来ていて、それらの人達がたまに集まって、オフ会と称して、親睦を深め、更にその輪は広がり続けているのです。彼の人間的な魅力が為せる業だと感心してしまいます。

 私は彼のような人生を歩むことは出来ませんが、彼の生き方には、現代の人間がなかなか見い出せないような自分自身に嘘をつかない幸せな生き方のヒントがあるように思います。もちろん、みんなが彼のような生活をするようになれば、社会は成り立たなくなってしまいますので、彼と同じようにすれば幸せになれますと推奨する訳ではありませんが、少なくとも、人間との関わり方、物質的な欲望との付き合い方には非常に参考になるような気がしました。

 彼が台湾で、台湾の名門大学の学生の家に泊まったときのことですが、その台湾の若者に目標を聞くと、金を増やすことだと彼は応えました。それに対して、その金を何に使うのかという質問に対して、若者は答えに窮していました。物質に対する欲望はそれを達成することそのものが目的となり易いですが、自分の人生の本当の目的になり得ないということだと思います。

 物質欲を捨てて、本来自分自身が本当に欲しいものを手に入れる為にだけの物質を得られればいいと考えれば、お金や富に執着することは減ると思います。お金や富は際限がありません。だから、それを求めると、人と諍いや争いが起こり、人の人生を踏みにじることだって平気になってしまうものなのです。

 それに対して、彼はひとつの究極の欲をはっきり認識していて、それを叶えられるだけの物欲しかもっていないのです。SNSの投稿で得られるお金で、今の生き方が出来るだけの稼ぎとなって来たと言っていました。

 皆さんがどのような生き方をしたいかを見つけ出せれば、そのことを叶えられるようなお金を得られるだけで満足を得られるのです。それが無ければ、際限無く金や物質欲に一生悩まされることになるのです。そして、そのことが社会の平穏を乱すことにつながってしまうのです。

投稿者

弱虫語り部

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