白亜紀後期に生息していた水棲の大型爬虫類であるモササウルスの化石は世界のあちこちで発見されています。このモササウルスの研究において、日本の少年が大きな発見を学会で発表し、いろいろな賞を受賞しています。驚くべきは、この少年は小学2年生8歳のときに、悪性腫瘍を患っていることが判明し、余命10年と診断されていた中で、中学3年から高校一年にかけて研究を続け、モササウルスの下顎の関節の機能に着目し、関節を用いて口を左右に大きく開き、発生する水流と共に獲物を吸い込んで捕食していたという仮説を立て、発表したことです。高校2年生のときに、日本地質学会の小・中・高地学研究発表会で発表し、優秀賞を受賞しました。そして、その九ヶ月後に、その短い生涯の幕を閉じることになりました。

 特筆すべきことは、彼は余命宣告された後も、入院生活を挟みながらも研究を続けて、モササウルスに関する新説を打ち立てたことです。彼の成果が学術的に貴重であることは、彼の説が大学の研究者に引き継がれ、その説をもとにした生態をベースにして、数々のテレビ番組が制作されたことからも伺えます(私はその番組のひとつを観て、この少年のことを知りました)。

 私のような凡夫から見ると、17歳で亡くなった少年は可哀そうでなりませんが、そのような同情など必要無いほど、この少年は与えられた時間を精一杯生き抜いたのです。人間、少しでも長生きしたいと思うのが普通だと思いますが、そのようなことに惑わされること無く、自分の道を進み続けたこの少年の生き様に、なんとも言い難い感動を覚えました。自分がそのような生き方を出来ているかと言うと、何とも恥ずかしい限りです。

 この感動に接し、自分自身もこの先何年生きられるかは不明ですが、その限られた時間を精一杯生きたいと切実に思うようになりました。自分の幸せの物差しで測れるような充実した時間を追い求めたいと思うのです。もし、そのような生き方が出来れば、これまでより死も怖くなくなるかもしれません。

 人間、この世に生を受ければ、その長さは様々ありましても、いつかは死が訪れるのです。それはどんなに富を得ていようが、権力を握っていようが、いつかは全てを放棄せざるを得ないときが来るのです。それであれば、富や権力を使って、自分自身の欲望達成の為に多くの人間の人生に土足で踏み込むようなことをするより、次代を担う人達が少しでも幸せな生き方が出来るように他人の痛みを知り、お互い助け合うような社会を築けるようなことにほんの少しでも貢献したいと思います。

 このブログを始めたときの初心を思い出し、これまで書き記して来ましたブログを整理し、出来ればもっと読みやすい本にまとめていくことを目指したいと思います。