NHKのドキュメント番組で、渋谷駅の100年に一度の大規模再開発を取り上げていました。渋谷駅周辺には多くの鉄道路線が入り込み、複雑な構造で、利用者のアクセスも大変不便でありました。そこで、東急、JR東日本、東京メトロの三社が共同で、大規模な再開発を行うことを決め、この工事を長期間をかけて推進しています。
困難を極めるのは、渋谷駅を利用する多くの乗降者に影響しないように、建物やホームを解体したり、新たにホームを建設したり、線路を移動したり、建物を建設したりすることで、一見、不可能のように思える難工事が想定され、当初は各社とも、実際にプロジェクトを実行することには躊躇していました。しかし、東急のひとりのエンジニアが熱心に各社のキイマンを説得し、この計画が日の目を見ることになったのです。もちろん、この計画を進めるには、多くの技術者の知恵が結集され、また工事にあたっても、大型の重機に頼れない箇所が多く、多くの卓越した技能を持った現場作業者の努力もありました(詳細は、NHKアーカイブから新プロジェクトXをご覧ください)。
私が心を打たれたのは、一見不可能に思えることも、それを実現することにより、どれだけの効果が得られるかという夢を諦めない強い意志を持った人物がリーダーとして、多くの人を説得し、その人達の心をも動かしたことです。そして、不可能を可能にする為に、各人が知恵を絞り、知恵を結集したこと、そして、その思いにすべての関係する技術者と作業者が持てる経験、技術、技能を費やして、実現に向けて心をひとつにして邁進したことです。
今の政治に足りないのは、まさしくこの二点ではないでしょうか。
例えば、この物価高で生活に窮する国民が多い中で、各政党は物価高対策を打ちあげてはいますが、各党バラバラで、結局言いっ放しで終わってしまい、国民に何の恩恵も授けぬまま、時間ばかりが過ぎています。その裏には、自民党では総裁選びという名のボス猿競争にみんな奔走し、野党各党は、勢力争いで、各党が言いたい事を言いっ放しで、空しく時間が過ぎて行っています。
本当に、国民の為には何にもならないと権力闘争を止めて、国民のこの状態を救うことに一致団結し、少しでも早く実現しようと、まとめるリーダーがいません。
そのようなリーダーの下、日本全国の知恵を結集し、この難問に立ち向かう一大プロジェクトを作り、進めるようなことが出来れば、きっと、不可能に思えるようなことでも、成し遂げられるのです。
日本は政治以外の世界で、そのような難しい課題にチャレンジし、多くの成果を得て、敗戦国から立ち直ったのです。実利のある世界では、生産的な世界では、困難を克服することを可能にして来たのです。
一方、成果を得られずとも、言いっ放しでも、議員という特権を持てさえすればそれでいいというような根性の政治家達が多く、日本は政治の為に、どんどん住み難い社会になって来たのです。
政治の世界でも、国民から政治に求められる、もちろん難しい問題ではあっても、その実現を成し遂げることを本分として、結束して進めることが出来れば、きっと今回の物価高対策のような問題も、きっといい手を打てる筈だと思います。
真のリーダーとそこに集い、難解な問題でも、知恵を絞り、実行する人材を揃えることが出来れば、日本の政治は変われると思います。そしてそのような人材が政治の世界に生まれるように、選挙システムを変革し、議員達の待遇を見直すべきだと思うのです。