NHK放送で、米国の金融界で大きな影響力を与えて来た二人の人物に関するドキュメント番組がありました。長らく連邦準備制度理事会(FRB)議長を務めて来たアラン・グリーンスパン氏と有名な投資家のウォーレン・バフェット氏です。私が興味を引いたのは、グリーンスパン氏に大きな影響を与えたアイン・ランド氏の思想です。彼女は、ロシア革命後のソ連に生まれましたが、全てに強く統制された共産党支配の社会に強い嫌悪感を持ち、その後、米国に移って来た人物でした。彼女の思想はその経験を元に作られていて、人間にとり理性が唯一絶対的基準であり、自己の幸福追求が人生の正しい目的であり、生産的な達成が人間にとり最も崇高な活動である、ということです。そのような人間を英雄的存在とみなす人間感を持っていました。だから、社会は、政府などの権力により、様々な制限をするより人間の行為に任すべきであるとして、経済についても人間の自由な営みに委ねることが重要であり、そうすることで、国民にとって最もいい形になって行くものである、と言うことであるようです。そして、グリーンスパン氏の自由資本主義とでも呼ぶ考え方が米国の経済をコントロールして来たと思います。しかし、そのような金融施策の下でも、いくどか経済破綻を起こした金融恐慌が起こってしまいました。ブラックマンデーやリーマンショックなどです。そして、そのような恐慌を経ても、大きく資産形成を果たしたのが、バフェット氏でした。

 幸福追求が人生の最大の目的であるなど、ランド氏の思想に大いに共感することはありますが、しかし、私自身は人間に対してそこまで信用することは出来ません。社会全体を人間の自由な行いに委ねるのには、かなりの危険性があると思っています。もしも全ての人間が他人を思いやり、他人の生活を尊重するほど、成熟していれば、全てか自由でも秩序ある社会が出来上がると思います。しかし、現実は違います。私がこのブログで常に述べていますように、大まかに言えば、この世には三種類の人間が存在します。極一部の人は、他人が幸せになろうとして生きる人生を強く尊重することが出来るAEタイプの人ですが、大多数は悪い人間にはなりたくないが、バレなければ自分の欲望に負けそうになる弱いWEタイプですし、そして、一部は、全く他人の痛みなど感じない、自分の欲望達成の為には何でも出来るようなDEタイプなのです。(「3. 非常におおまかだが、本質的なひとの分類」を参照してください)

 もしも社会にAEタイプだけしかいなければ、法律も無いくらいの自由な世界でも、秩序ある平穏な社会が出来るとは思いますが、DEタイプの人間がいる以上、この世界には、理不尽で不条理なことが蔓延してしまうのです。そして、大多数のWEタイプは法律が無くて罰せられないとなると、DEタイプと同じような振る舞いをする人間が多数出て来ると思います。

 だからこそ、自由は大切ですが、人間の営みに完全な自由を与えてしまえば、大きな災厄が訪れるのです。

 グリーンスパン氏は経済活動について、自由を尊重しようとしましたが、結果、世界は前述したような大恐慌を何度も経験することになってしまったのです。反対に、バフェット氏はそのような性善説に立たず、経済界全体の流れより、個々の企業の力、将来性を重視し、例え、大恐慌の中であろうと、そういう企業が足元苦境であろうとも、投資して、支えることを実行し、いずれは巨万の富に結びつけることが出来たのでした。

 ランド氏の思想は最近ではイーロン・マスク氏など多くの人にも影響を与えたようですが、私は、社会全体を全ての自由に委ねることには反対です。自由というものは、秩序があってこそ、意味があるのです。ですから、社会の悪に対抗するなんらかの統制は最低限必要だと思うのです。もちろん、共産主義諸国のように、全てを統制することは反対です。

  現在の世界には、独裁政権や軍事政権がかなり存在し、その国々においては、国民の自由は大幅に制限されています。そのような国に住む人々が自由を渇望するのは当然だと思います。しかし、そうだからと言って、何でも自由にしてしまうと、そこに付け込み、社会を混乱に落とす人間が多数出て来るのです。

 自由とは、すべて自由に何をしてもいいのではなく、他人を尊重すると言うベースの秩序が保たれた上で、認められるものだと思うのです。そして、その為には、人間の理性を信じるだけでなく、人間の悪の部分に何らかの歯止めをかけなければならないのです。

投稿者

弱虫語り部

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 ※ が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA


日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)